小説だよブッコちゃん

図書館の本を貸し出し期間過ぎてもまだ返していない女、の感想。(ひどい

山ん中の獅見朋成雄

山ん中の獅見朋成雄

舞城フェア(オレの中だけ)そろそろ終焉か?の時に読んだ。これの前に読んだ「みんな元気」がちょっとなーとか感じたので、あまり期待していなかった。のだけど。阿修羅ガールの中で特に好きだった架空の森の中のお話、にも通じる、おとぎばなしとファンタジーと日本昔話が混じった様な不思議な物語。どこか懐かしさのある新しい手法。ううむ。前に人に「舞城さんは長編より中編か短編のヒトかもしれないなー」とか言ってしまったけれど。嘘。前言撤回。長編いい。これいい。ぐいぐい読める。
家系の遺伝で、背中に馬の鬣のような毛が生えている主人公「獅見朋成雄(しみともなるお)」14歳。めっぽう足が速く度胸も知恵もあるけれど、風変わりな書家の元に通い自らも書を学び相撲をとり、普通の中学生らしからぬ日々を重ねる。ある日、書家を探して裏山に入ると、いるはずもない馬に会い、頭が陥没し息も絶え絶えな書家を見つける。そこから普通の日常とは掛け離れたこの世にありながら全く異質な世界に踏み込んで行く。
実際訳は判らない事ばかりだし、相変わらず答えなんて用意されていない。ただ面白ければそれでいいじゃない?と。少なくとも、私はこれでいい、と思う。

でもこれ、アマゾンのレビュー見たらイマイチ評価なのな。「千と千尋の神隠し」のパロだとか、倫理を説こうとして失敗している、どうとかて。まあ確かにそれはあるか。異世界に行って成長して帰ってくる主人公。違うところは、成雄はいつでもそうしようと思えば逃げられたし、最後もなんの未練もなく帰っていった。その都度の感傷とかがなく、全てを受けとめて流して行く。人殺しも人食いでさえも。最後に一緒に逃げる女の子が成雄に言う一言「あのねえ、成雄君、前から思ってたんだけど、君、目の前にあるもの、とりあえず全部丸のみにするっていうの、やめた方がいいよ。」て。
確信犯なんだからなあ。